エンジンオイルがアスファルトにこぼれた時、インターネット上にはさまざまな「対処法」が紹介されています。
しかし、その多くは“結果的に汚れを悪化させてしまう”方法であることをご存知でしょうか?
ここでは、よく目にする、聞く処理方法が「なぜうまくいかないのか?」、その理由を分かりやすく解説します。
一見、食器用洗剤で油を落とせるのだから、地面の油も綺麗に落とせそうに思えるかもしれません。
しかし、アスファルトに対してはむしろ逆効果になることが多いのです。
食器用洗剤に含まれる界面活性剤は、油と水を馴染ませて乳化(白濁)させる作用があります。
この乳化により、油はサラサラと粘度が下がり、雨水が浸透するように、アスファルトの細かい隙間にまでドンドン入り込んでしまうのです。
さらに、水を使って洗い流すことで、サラサラに変化した油は広がりやすくなり、時間が経つと水分だけが蒸発し、油だけが新たな場所に残留するという結果に…。
つまり、油汚れの範囲が広がり、色が濃くなり、除去がさらに難しくなるのです。
重曹も「ナチュラルクリーニング」で知られる人気素材ですが、油処理においては以下のような限界があります。
アルカリ性という性質を利用して乳化を促す目的ですが、界面活性作用は非常に弱いため、オイルを分解・除去する力は低めです。
結局、水を使う処理になるため、食器用洗剤と同様に汚れの広がりや沈着のリスクが高いのです。
そして、効果が現れない場合は「最初から何もしていないのと同じ」状態にしかならず、時間と手間だけが無駄になります。
実は、「吸着材を使ったけど取れなかった」という方もいらっしゃいます。
その理由には以下のような現実があります。
粉末がオイルに直接触れていない:こぼれた油の量に対して、十分な量を使用していなかったり、部分的に使うと効果は半減してしまいます。
粒子が大き過ぎる吸着材を使用した場合:油との間に空間ができて、うまく吸着できません。
そもそも、油がアスファルトの内部まで染み込んでからでは、粉末が油に届かない為、除去できないのです。
つまり、「こぼれてすぐ」の段階で処理しなければ、効果的な吸着はできないということです。
油汚れの処理は、「順番がすべて」と言っても過言ではありません。
もし、「自分で処理したい」という場合は、次の順番を厳守してください。
最初に「粉末油吸着材」で物理的に処理する
→ 表面に出ているオイルを、できるだけ残らず吸着させ除去する
その後、必要に応じて洗剤や重曹で仕上げ清掃する
→ 吸着処理の後であれば、濃くなる・広がるリスクが大幅に下がります
食器用洗剤や水で最初に処理してしまう
→ 油汚れが内部に入り込む、広がる
その後、吸着材を使っても効果が出ない
→ 汚れが「取れるもの」から「取れないもの」に変わってしまう
私たちのもとには、「失敗してから問い合わせてくるお客様」が、あとを絶ちません。
その多くは、「既に何か処理をされましたか?」と聞くと、「やっぱり...」と。
もうお気付きのように、「食器用洗剤を使いました…」、「重曹を使って水で流しました…」というケースばかりです。
安く・手軽に済ませようとしたがために、余計に高くついてしまったという現実を、私たちは日々目の当たりにしています。
ここで誤解のないよう、最後にお伝えしておきたいのは、私たちは決して「食器用洗剤の効果自体」を否定しているわけではないということです。
食器用洗剤は、本来、台所での使用を想定し、動植物性の油脂や食品の汚れを洗い落とすために設計されたものです。
それをまったく異なる性質をもつ「アスファルト+鉱物由来のオイル」に使っても、本来の効果は期待できません。
食器を洗った時のような「スッキリ落ちる!」というCMのような効果が出ないのは当然です。
鉱物由来のエンジンオイルは、界面活性剤に対する反応も弱く、十分な乳化が起きづらいのです。
つまり、適材適所で使えば優れた洗剤も、「場違いな使用」で逆効果になることがあるという、当たり前の事実を知っていただきたいのです。
正しい方法を、正しいタイミングで!
それが、アスファルトにこぼれたエンジンオイル汚れを“なかったこと”にするための、唯一の近道です。